1箇月単位の変形労働時間制とは
1箇月単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の2)とは、1箇月以内の一定期間を平均し、1週間の労働時間が40時間(常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作を除く)、保健衛生業、接客娯楽業の特例措置対象事業場は44時間)を超えない範囲内において1日8時間及び1週間40時間(特例措置対象事業場は44時間)の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。
採用要件
1箇月単位の変形労働時間制の採用要件は、就業規則または労使協定で次の事を定める必要があります。
① 対象労働者
② 変形期間(1箇月以内)
③ 変形期間の起算日
④ 変形期間における各日、各週の労働時間(変形期間を平均して、1週間あたりの 労働時間が40時間(現在特例措置対象事業場は44時間)を超えない設定が必要)
⑤ 変形期間の各日の始業・終業時刻
⑥ 労使協定の有効期間 ※労使協定を採用の場合のみ
シフト勤務の場合
1箇月単位の変形労働時間制の要件として就業規則または労使協定に各日の始業・終業時刻を定める要件がありますが、シフト勤務の場合そのことを定めることができません。シフト勤務で実施する場合には次のような通達(昭和63・3・14 基発150号)があります。
業務の実態から月ごとに勤務割を作成する必要がある場合には、就業規則において各勤務の始業・終業時刻、各勤務の組合せの考え方、勤務割表の作成手続及びその周知方法等を定めておき、それに従って各日ごとの勤務割は、変形期間の開始日前までに具体的に特定することで足りる。
1箇月変形労働時間制の総枠
1箇月単位の変形労働時間制の変形期間を1箇月単位で行なう場合、月により暦日数が28日から31日となり、月の日数により1箇月の法定労働時間は変わってきます。その法定労働時間の総枠時間は次のとおりです。
暦日数 |
週法定労働時間40時間 |
週法定労働時間44時間 (特例措置対象事業場)
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28日 |
160時間 |
176時間 |
29日 |
165.71時間 |
182.28時間 |
30日 |
171.42時間 |
188.57時間 |
31日 |
177.14時間 |
194.85時間 |
採用に適している部署
次のような部署が採用に適しています。
・月内に決まった繁閑期間、繁忙日がある
・業務の都合により1日8時間を超える労働時間を設定する場合
変形労働時間制運用の留意点
1箇月単位の変形労働時間制に限らず他の変形労働時間制(1年単位、1週間単位)も同様ですが、変形労働時間制が無効となった場合、1日8時間、1週40時間(1箇月単位の特例措置対象事業場は44時間)の法定労働時間を超えた時間は時間外労働となり、次の事由により未払い割増時間外労働賃金が多額となる場合があります。
・変形労働時間制の採用は部署単位が多い為、対象人数が多人数になる
・変形労働時間制実施月は毎月、時間外労働賃金が発生していることになる
・賃金の請求権(労働基準法第115条)の時効期間3年分支払いの場合がある
※労働基準法の条文では時効期間は5年となってますが、当分の間はその期間が3年とされています。
1箇月単位の変形労働時間制で次の裁判例があります。
1箇月単位の変形労働時間制が適用されている従業員3人が、未払割増賃金の支払いを求め会社を提訴し、裁判所は変形労働時間制の要件を満たしていないとして3人に対し,割増賃金約1,453万円(他に付加金、遅延損害金あり)の支払いを命じた。
(イースタンエアポートモータース事件 東京地裁 令和2年6月25日判決)
1箇月単位の変形労働時間制の詳細については厚生労働省の次のリンクをご覧ください。
1か月単位の変形労働時間制
当事務所より
週休3日制(1日10時間労働、週4日勤務)の場合、変形労働時間制を採用する必要があります。それについて事業所便り26号に掲載しています。
1箇月単位の変形労働時間制についてお気軽にお問い合わせください。
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